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バイオエタノールってどうなの? -万物の光と影- [農業]

明日から、
「貴方が普段食べている食事の何割かがなくなって、車の燃料になります」
と言われたらどう思うだろうか。

私は嫌だ。
だってお腹減るもん。そ~んなに豊かな食事はしてないって。

皆少なからずそんなふうに思うのではないか。
現実的には私たち飽食日本人はそりゃ2割くらいカットしても何とかなるのだろうが、でももっと貧しい国の人たちってこういった問題を突きつけられたらどうだろうか。
「車持ってねえよ。てかそんな金もないし。てかてか道路ないし。」みたいな。
そんな自分達にはメリットも無いことに食事を使われて・・・本当にお先真っ暗じゃないだろうか。
今回はそんな話。

「バイオエタノール」というものがある。

バイオエタノール
植物を原料とするエチルアルコール。輸送用燃料などに用いられる。バイオマス-エタノール。〔燃焼によって発生する二酸化炭素は原料の植物が光合成によって大気から吸収したもので,石油とは異なり大気中の二酸化炭素の総体量は変わらないとされる〕

                                          三省堂「大辞林第二版」より抜粋

お酒好きな人ならわかると思うのだが、ま、簡単に言うと本格焼酎みたいなもん。
米・麦・芋からお酒をつくりましたよ~、みたいな。
バイオエタノールは小麦、トウモロコシ、サトウキビとかを原料に発酵させてつくられた植物由来のアルコールのことである。
今これがガソリンの代替として注目されており、車社会となったこの世界で「地球に優しいエネルギー」として台頭しつつあるのだ。
なるほど化石燃料を用いた排気ガスを出すガソリンよりは二酸化炭素の増加という面で見るならば確かに「エコロジー」かもしれない。

で・も・
反面、このエネルギーを使うことでトウモロコシ・小麦の「食べるために使われていたぶん」は減ることになる。
そう、そこで冒頭で話をしたような事態が起こる。
もともとトウモロコシとかって「人間が食べるため」とか「家畜のエサにするため」につくられていた野菜。
それをここにきて「ガソリンの代わりに使いまーす」って言われたらどうなんでしょう。

アメリカは元々トウモロコシのつくりすぎ・余りすぎ問題があってバイオ燃料に注目したような背景があるので別にいいのだが、一方で元々食べるための野菜をつくっていた貧しい国々がここにきて急に「バイオエタノールのための野菜」をつくりはじめちゃった問題が生じている。

すると・・・あれ、食べ物が足りない。家畜のエサが足りない。
あれ、地球に優しい燃料がいっぱい出来始めたのに、何故だろう地球人のお腹はいっぱいにならないぞ??

何で農家が食べ物をつくるのを止めて燃料をつくるかといえば、それは普通に「食べ物」をつくるより「儲かる」から。

そりゃあ「儲かる」方に目を向けるのは、生産者として当然の理屈。
農家って別にボランティアじゃないし。ちゃんとしたビジネス。
植物を育てて地球の緑をいっぱいにするために仕事をしているわけじゃない。
生きるためにお金を稼ぐために植物をつくっているのだ。

でも何かおかしい話。
人間が生きる地球を守り、ひいては人間自体を守るため、エコロジーのために考え出されたバイオエタノールの利用なのに、ぐるりと回って人間を苦しめている。

エコって何だろう。地球に優しいってなんだろう。
私はエコの本質とは「今まで無駄になっていたものを再利用し、新たな代替手段として用いること」だと思うのだが。
今、「他の分野で重要な役割を果たしているものを無理矢理別の分野にひっぱってくること」じゃないと思うんだが。
エコロジーを唄いながら他のものに弊害を与えるって本当に地球に優しいのかなあ・・・。

エコロジーって言葉は清々しいけど、突き詰めちゃうと「人間が長く地球で暮らしたい」ってことだと思う。
だとするならば、一つの技術としてバイオエタノールは評価できるかもしれないが、今の段階では地球を救うための救世主のような手段では決してないように思う。

だいたいの物事には光の部分と影の部分がある。
でも得てして光というものはまぶしくて、影の部分を打ち消してしまいがちだ。
光の部分が強ければ強いほどその傾向は強い。

「良いところもある、でも悪いところもあるんだよ」

TVのニュースとかってそういう目線でいつも報道してほしい。
こんなブログなんかよりたくさんの人が見て、そしてそれを見て何か考えているんだからこそ、様々な見方で物事を取り扱ってほしい。
老若男女、「みんなが考えられる機会」を提供してほしい。

時には、あえて「影」を注目することで「光」の大切さ・ありがたみを皆がわかることだってあると思うから。

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関連リンク:
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%A4%A5%AA%A5%A8%A5%BF%A5%CE%A1%BC%A5%EB


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コメント 6

まったく考えさせられますね。。
by (2007-11-15 22:18) 

ブロガー(志望)

お邪魔します。
 自分は「光も影もあったものではない。バイオエタノールは成り立たない」
と考えています。モノ(食料等)を作るのにエネルギーを使う事はあっても、
エネルギーを作るのにそれ以上のエネルギーを使ったら無意味だからで
す。地中に埋まっているものを掘り出して精製する石油と違い、バイオエタ
ノールは化学変化(発酵)で作らねばなりません。それで「エネルギーを得
る」事になるかは疑問です。石炭から作る人工石油は半世紀以上前のドイ
ツに既にありましたが、戦時中といった「背に腹は代えられない」状態以外
では使われませんでしたし(で石油がふんだんに使える相手には勝てな
い)。
by ブロガー(志望) (2007-11-15 22:41) 

なしえん

水郷さん

色々思うところがあるとは思うのですが・・・
小さいながらも提言してゆきたいものです。
by なしえん (2007-11-16 18:12) 

なしえん

ブロガー(志望)さん

はじめまして。コメントありがとうございます。
そして・・・なるほど考えさせられました。

光もなければ影もない。それは「闇」ですね。
一筋の光もない場所では影という概念すら存在し得ません。
今のバイオエタノールに発がん性が~という論文も出ていますしね。

ただ私は一つの手段としてアリだとは思うのです。
無論現在の穀物利用のような有用植物利用ではなく、現在廃材として処分される有機物から転用出来たら。
現在農林業から生じる剪定枝や枝打ち枝等、単に燃やされるモノから活路は見出せないのか。

おっしゃるようにエネルギーを得るのにエネルギーを使う矛盾は多く、ペットボトルの再利用などが無駄なエコの最たるものだと思います。
ただ、超高温溶融還元再資源化や超音波醸造など、重油を用いる従来のバイオエタノール分離に代わる方法も考え出されてはいます。
無論それがCO2収支でどうなのかもこれから議論が交わされると思います。

私はまだ結論を出すには早いと思います。
というか、まだバイオエタノールは「闇」ではなく「影」だと思いたい「願望」かもしれませんけどね(汗
by なしえん (2007-11-16 18:37) 

megu

こんばんは^^♪

>>農家って別にボランティアじゃないし。ちゃんとしたビジネス。
そうですよね。テレビを見てたりすると、農家や農業って誤解されてる部分があるのかなぁって思う。ほのぼのしてて、自給自足で、楽しんで自分たちが食べるもの作ってまーす。みたいな雰囲気というか…農業を甘くみてるというか。実際は、厳しい世界だと思うけども…。なんて偉そうなこと言えないんですけどね(;´▽`A''

>>「良いところもある、でも悪いところもあるんだよ」

なんか、いい言葉ですね。考えさせられます。
これって人にも言えることですよね。
その人の良いところをみるのはすごくいいことなんだけど。
悪い部分も見てほしい。光と影をたしたのが、「その人」だってゆうか、光と影は切り離せないものだと思う。
光と影を含めて、受け入れることって難しいことですけどね。
なにが言いたいのかよくわかんなくなりました(笑)

記事に関係ないようなことばっか書いてしまってすいません∩(゜∀゜;*)
by megu (2007-11-16 20:34) 

なしえん

>>記事に関係ないようなことばっか書いてしまってすいません

いえいえそれで構いません。
むしろ自由に色んなことを思ってくれた方が嬉しいです。

何でも共通するところはあると思います。
「植物とか農業から見る人間の在り方」みたいなものも私の伝えたいテーマではあるのです。

良いところも悪いところもひっくるめて「その人」ですよね。
同性異性問わず、その人の影を受け入れられて初めて、その人と本当に付き合っていることになるんだと思います。
by なしえん (2007-11-17 22:27) 

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